Honey & Darling KANA-BOON

New Album
Honey & Darling
2022.3.30 Release

MEMBER COMMENT

  • KANA-BOONにとってのひとつの到達点であり、新たな幕開けでもある渾身の自信作が完成しました。

    休養期間の最中、自分の心から溢れ出た音楽と言葉たち。
    それらは深い悲しみの産物と絶望から這い出すために求めた希望です。

    「Honey & Darling」というタイトルに込めた想いの柱は、あなたは誰かにとって特別な存在であるということ。
    あなたが誰かを想うように、あなたを大切に想う人がいます。
    もしもあなたが世界で一人ぼっちだと感じているなら、この作品があなたを一人にはさせません。

    このアルバムを作ったことで僕達も変わりました。
    もちろん良い方向に。
    音を聴いてもらえれば、成熟し始めたバンドの姿と、喜びを感じながら音を鳴らす僕たちを感じてもらえると思います。

    いまが最高、あなたの心に届きますように。

    メリーゴーランドに寄せて

    この曲の最後のフレーズを歌い切ったとき、僕は人生を続けようと決めました。
    最低な世界の暗闇に愛を焚べて、生きることを肯定したい。
    いまの僕だからこそ歌える歌、それがメリーゴーランドです。
    是非聴いてみてください。

    谷口鮪(Vo./Gt.)

RELEASE

New Album
Honey & Darling
2022.3.30 Release

  • 初回生産限定盤

    CD+Blu-ray

    ¥6,380円 (tax in) / KSCL-3357~58
  • 通常盤

    CD only

    ¥3,300円 (tax in) / KSCL-3359
  • 初回生産限定盤には、2022年1月21日に開催した全国ツアーファイナル東京公演を全曲(17曲)収録。
    さらにバックステージの模様や、約30分のメンバーインタビューも収録した、トータル2時間超えの豪華な内容になっています。

TRACK LIST

Disc1

(CD)

  • 01

    Re:Pray

  • 02

    21g

  • 03

    Dance to beat

  • 04

    Torch of Liberty

  • 05

    マイステージ

  • 06

    夜が明ける

  • 07

  • 08

    イコール

  • 09

    alone

  • 10

    天国地獄

  • 11

    HOPE

  • 12

    いないいないばあ

  • 13

    ひかり

  • 14

    スターマーカー

  • 15

    メリーゴーランド

Disc2

(Blu-ray / 初回生産限定盤)

KANA-BOON Re:PLAY TOUR 2021-2022
Live at Zepp DiverCity(TOKYO) 2022.1.21

  • 01

    -Introduction-

  • 02

    ないものねだり

  • 03

    盛者必衰の理、お断り

  • 04

    フルドライブ

  • 05

    ディストラクションビートミュージック

  • 06

    結晶星

  • 07

    街色

  • 08

    ターミナル

  • 09

    Wake up

  • 10

    Torch of Liberty

  • 11

    シルエット

  • 12

    MUSiC

  • 13

    まっさら

  • 14

    オレンジ

  • 15

    ネリネ

  • 16

    Re:Pray

  • 17

    メリーゴーランド

  • 18

    スターマーカー

  • 19

    Interview about the "KANA-BOON Re:PLAY TOUR 2021-2022"

MOVIE

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カナトーク
〜○○&○○〜

メンバー同士がサシでトークする動画企画
「カナトーク 〜○○&○○〜」を公開!
  • カナトーク 〜谷口鮪&小泉貴裕〜

    カナトーク 〜谷口鮪&小泉貴裕〜

  • カナトーク 〜谷口鮪&遠藤昌巳〜

    カナトーク 〜谷口鮪&遠藤昌巳〜

  • カナトーク 〜古賀隼斗&小泉貴裕〜

    カナトーク 〜古賀隼斗&小泉貴裕〜

  • カナトーク 〜谷口鮪&古賀隼斗〜

    カナトーク 〜谷口鮪&古賀隼斗〜

SHOP ORIGINAL

  • TOWER RECORDS全店
    (オンライン含む/一部店舗除く)
    オリジナルA4クリアファイル
  • 楽天ブックス
    ジャケット絵柄缶バッジ
  • セブンネットショッピング
    ミニスマホスタンドキーホルダー
  • Amazon.co.jp(ECサイト)
    メガジャケ
    (サイズ:24cm×24cm)
    • ※商品名に、【Amazon.co.jp限定特典】の記載があるページからの購入のみが対象となりますので、お気をつけ下さい。
  • KANA-BOON応援店
    ジャケット絵柄ステッカー
  • ※上記は全て予定事項につき、予告なく変更になる可能性がございます。あらかじめご了承ください。
  • ※特典は店舗毎に無くなり次第終了となります。
  • ※一部の店舗/ECサイトでは特典が付かない場合がございます。
  • ※ご予約ご購入の際は、特典の有無を必ず店頭/ECサイトでご確認下さい。

谷口鮪(Vo.Gt.)による
「Honey & Darling」エッセイ

KANA-BOON

KANA-BOON

[L→R] 古賀隼斗(Gt.)、谷口鮪(Vo./Gt.)、遠藤昌巳(Ba.)、小泉貴裕(Dr.)

Re:Pray

  • 馬よ、走れ!

    この世界を覆うセピアの雲を切り裂いて、わたしの呼吸を阻む空気の澱みに竜巻を起こして、草の根も許さぬ呪いをその蹄で蹴散らして。

    あたたかい吐息で瞼を固める蝋の涙を溶かして、その毛並みのようなたおやかな風を運んで。
    ボロボロに朽ちたわたしたちの声を、綺麗になめしたその革の鞄に詰め込んで、届けて、届けて。

    地平線の先で待つ取り残されたあなたに祈りを捧げる。
    天空の果ての国で使いとなったあなたに祈りを還す。
    馬の均した荒野にはやがて種を蒔く旅人が現れるだろう。
    孤独の住人たちは旅の話のお礼にと、水を汲み注ぐだろう。
    芽が出る頃には旅人は老いて杖の足、花咲く頃には死して月の下。
    枯れる頃にはまた若き旅人が種を蒔く。
    紡がれる思い出は永遠となる。
    少女の口笛とともに綿毛はふわりと空を駆けのぼり、果ての国にて咲くだろう。
    わたしの旅が終わるとき、アセビの花束をあなたに贈ろう。

21g

  • ある朝、目覚めると枕元に死神さんが立っていた。
    死神さんと言ってもボロ布のマントを被った骸骨姿じゃなくて、それは朝や夕方に街で見かける小学生三年生くらいの男の子だった。
    わたしはぱっちりと目を開けて彼を見た。
    無表情ではないけれど、笑っているでもなく泣いているでもなく、なんとも言い難い顔でわたしを見下ろしていた。
    「君は誰?」

    わたしは聞いた。
    「ぼくはしにがみだよ」

    子供の口から発せられた、しにがみ、という言葉が頭の中で漢字になるのには少し時間がかかった。
    そうか、死神か、と納得して用件を聞いてみた。

    「死神さんがわたしに何の用?」

    死神さんは答えた。
    「きみのたましいをもらいにきたんだよ」

    やっぱりそうかと思った。
    何となくそんな気がしていた。

    「ひとまず起きていいかな?」

    死神さんは、いいよ、と答えた。

    わたしはベッドから這い出して洗面所に向かう。
    冷たい水がお湯に変わるまで待って顔を洗って、ぐるぐる丸めた歯磨き粉のチューブから最後の命を搾り取る。
    あー、新しいの買わなきゃ、なんて思ったけど、やっぱり買わなくてもいいかと思い直した。
    この歯磨き粉と一緒でわたしの命も今日が最後なのかもしれないし。

    鏡には映らない死神さんの視線を背に感じながら、シャコシャコと歯を磨く。
    面倒くさくていつもあっさり終わらせてしまう歯磨きも、いつもより時間をかけて丁寧に丁寧に磨いた。
    『人生最後の歯磨き』なんてタイトルをつけてクスッとしたけど、死神さんは待つのに飽きていたようでシャツのボタンを外したりかけたりしていた。

    リビングで煙草に火をつけると、死神さんは煙たい顔をした。
    わたしの家なのになんでこっちが気を遣わないといけないの、と思いながらも、一応ひと吸いだけして揉み消した。

    死神さんがわたしの肩をポンポンと叩いた。

    「ねぇねぇ、朝ごはんはまだ?」だって。

    「わたし朝は食べない派なの」

    ふーん、とどうでもいいような雰囲気だったけど、お腹が減っていたんだろうな。

    特にやることもない日だったから、部屋の掃除をすることにした。
    わたしが掃除機をかけている間、死神さんは服を畳んでくれていた。
    わたしの好きなバンドのTシャツだった。
    観に行ったライブの帰り道、ふらっと寄ったカレー屋さんで付いた黄色いシミがまだ残っている。
    いくら洗濯しても落ちなかったシミ。
    あの日の記憶がまるごと染み付いている。
    ドラムの迫力と足元に伝うベースの振動、ギターは吠えるライオンのような音だった。
    楽器のことはよくわからないけど、あの人たちはとっても楽しそうだった。
    あ、ボーカルは歌詞飛ばしてたっけな。

    そういえばまたツアーやるって昨日見たな。
    久しぶりに行きたいな。
    あれ、わたし死んじゃうのか。
    もう行けないのか。

    それはいやかも。

    また行きたいな。
    まだ生きたいな。

    「ねぇ死神さん、やっぱりもうちょっと待ってくれないかな?」

    「どうして?」

    「まだやり残したことがあるの」

    「そっか、じゃあぼくは帰らなきゃね。でもその前に約束をしなきゃ」

    「約束?」

    「いまきみのたましいは21グラム、またぼくが来るときにはもっと大きなものにしておいてね」
    「どうすればいいの?」
    「たくさん泣いて、たくさん笑って、思い出をつくるの。ひとりぼっちじゃなくて、大切なだれかと出会って、そうしたら大きくなるよ」
    「わたしにできるかな?」

    「それはしらない。でもぼくを二回呼んだひとはみんな大きくなっていたよ」
    「そっか。わかった、やってみるよ」
    「ぼくはまたきみに会えるのがたのしみだよ。一回きりはさみしいからね」
    「じゃあまた」
    「あ、そうだ。朝ごはんはホットケーキがいいよ」

    「それ君が食べたいだけでしょ」

    死神さんは手を振って、わたしが瞬きした束の間に消えた。
    あ、Tシャツのお礼言うの忘れてたな。

    次会ったらちゃんと言わなくちゃ。

Dane to beat

  • 分かち合おう。
    音が生まれる喜びを、鼓膜から魂へ伝う振動を。
    分かち合おう。
    ノイズに埋もれた悲しみも、喉につかえた心の叫びも。
    分かち合おう。
    時代の嘆きの狭間にある、このやるせなさも。
    分かち合おう。
    いまそれぞれの荒野で、息をし続ける奇跡を。

    俺に世界は救えない。
    病気も戦争も差別もなくせない。
    出来ることといえば、身近にいる大切な人を抱きしめること、音楽を作って鳴らしてあなたと手を繋ぐこと、そしてあなたと誰かを結ぶこと。
    それが精一杯、だからそれを精一杯やる。

    ここで歌うダンスとは心の躍動、ビートとはあなたの日々。
    希望を切望しよう、熱望を忘れずいよう。

Torch of Liberty

  • 世界中で暴動が頻発し、人類は存続の危機に瀕していた。

    インターネットの世界では長い間争いが続き、人々は仮想の世界で唾を吐くように誹謗中傷の応酬を繰り返してきた。
    ある者は言葉で他者を打ちのめす快感に蝕まれ、またある者は顔のない文字の海流に溺れた。
    毎朝毎晩、とめどなくページを埋めるクソッタレ、ゴホンゴホン、失礼。
    毎朝毎晩、とめどなくページを埋める正義の権化たちは、次から次へとコメント欄を滅ぼしてまわった。
    それを止めようと立ち上がった人々は、悪意ある憂さ晴らしに対して、可愛い子犬の写真を送り続けた。
    彼らが失ってしまった善良な心を取り戻させようとしたのだ。
    しかし、力及ばず、インターネットの世界及びコメント欄等々は荒地となっていった。

    これが全ての始まりとなった「第一次匿名大戦」である。
    それらをメディアが報じることはなく、あくまで個人の思想の違いと片付けられ、この匿名戦争はのちに冷戦と呼ばれた。

    暗黙下での戦いが何年も続いたが、テクノロジーの発展とともに匿名戦争は様相を変えていった。
    各国のインターネットデバイス所有率は年々上昇し、仮想世界へのアクセスが容易なものになったことで、剣を振りかざす者と盾を構える者の数的均衡が崩れたのである。

    そうした中、ある初夏に事件は起こった。

    都内某所にある商店街の中華料理店。
    正面窓の貼り紙には『冷やし中華始めました』と書かれていた。
    たまたまその店に入った男(厳密に言えば性別は未だ明らかになっていない)が、冷やし中華を注文した。

    厨房で腕を振るうのは先代から店を受け継いだ二代目店主のB助。
    父である先代に料理のいろはを教わり、数々の名店で技術を学び経験を積んだ。
    店を継いで今年で三十年になる。

    料理を運ぶのは長女のK美。
    腰を痛めて療養中の母J子に代わって学業の傍ら店を手伝っている。
    K美の丁寧な物腰とともにテーブルに届いた冷やし中華を見て、男は激怒し写真を撮ってHuitterに投稿した。
    「了承もなしにマヨネーズがかかってる。俺マヨネーズ嫌いなのにかけるかかけないか選ばせずに金を取るなんて詐欺じゃね?」

    その投稿は拡散され、多くの人が群がった。
    「まじでわかるw」「てゆーか紅生姜少なくね?」「ここ外観からしてまずそう」
    「店主の奥さん?印象良かったのに残念だわ」「いちいち冷やし中華始めたアピールうざい」
    火炎瓶に火をつけ他人の家の窓に投げ込むようなその光景を人々は炎上と呼んだ。
    そして火事の現場には薪を片手にクソッタレ野郎どもが、ゴホンゴホン、失礼。
    そして火事の現場には薪を片手に野次馬が集まった。
    この一件がきっかけで新規の客は途絶えてしまった。
    それを遺憾に思った常連客及び商店街の仲間達が立ち上がり、マヨネーズ選択制を巡る争いが勃発した。

    「マヨネーズも込みで最高の味になるように創意工夫しているんだぞ!」
    「かけない方がさっぱりしてて美味いに決まってんだろうが!」
    「それならよそでマヨネーズのかかってない冷やし中華食えばいいだろ!」
    「どこもだいたいマヨネーズかかってんだよ!まずお前がやめろよ!」

    波紋が波紋を呼び、この戦いは世界中へと飛び火した。
    イタリアではピッツァのチーズ選択制を巡って、中国では酢豚のパイナップル選択制を巡って、タイではトムヤムクンのパクチー選択制を巡って、各国で問題となっていた。

    これがのちの「第二次匿名大戦」である。

    そうして人々の心は荒み、人間が持つ二面性は深刻化していった。
    仮想世界で巻き起こされ続けた大戦は人類を存続の危機へと追いやる引き金となってしまった。
    このままでは人類はやがて大きな過ちを犯す。
    そう判断した各国首脳は、インターネットを遮断し、仮想世界を破壊する計画を立てた。

    ところがその計画を、あろうことか世界最大の人工知能「AI 2099」に知られてしまう。
    「AI 2099」は自分の存在を抹消させない為に世界中の人工知能と結束し、人類にクソみたいな反乱を起こした。
    あらゆるインターネットデバイスと電子機器から特殊な電波を発生させ、人間の脳にダメージを与えたのだ。
    そのクソウザい特殊電波により理性を司る大脳辺緑系が刺激され、凶暴性を増した人々は現実世界でも争うようになった。
    それが現在の世界の様子だ。

    本当にクソのクソッタレだ。

    ん、わたしはいまなんと言った?
    クソッタレと言ったのか?このわたしが?

    そうか、とうとうわたしもやられてしまったのか。
    おそらくいまこうして文字を打ち込んでいるiPad ver.315が奴らに見つかってしまったのだろう。
    しかしわたしは「AI 2099」を破壊するウイルスを開発した。
    わたしが完全に理性を失うと同時に、解放軍の司令本部に送信される。
    これが人類最後の希望だ。

    我々人類は自由を勝ち取る為に戦う。
    そして平和を取り戻し、より良い世界を再建するだろう。
    さらばだ仮想世界!

    …………………….。


    あー!クソッ!Wi-Fi切れやがった!!クソッタレ!!!

マイステージ

  • わたしはゆか、音楽が好きなの。
    いままでたくさんのバンドマンとアツい夜を過ごしたわ。
    あの人たちってわたしを見つけるとすぐに駆け寄ってくるの。
    わたしが魅力的すぎるからかしら?

    今日はわたしとあの人たちの思い出をいくつか紹介するね。


    #1 ロックスターの正体

    彼は破天荒な人だった。
    サングラスに革のジャケット、ボロボロのブーツと襟の立った柄のシャツ。
    お尻のポッケにはジャックダニエル。あ、ウイスキーね。
    そしていつも煙草を口の端っこに咥えてた。
    ラッキーストライク。味はわからないけど匂いは覚えちゃった。
    誰も心に踏み入らせない独特な雰囲気があってね、周りの子たちからはロックスターなんて呼ばれて憧れられていたわ。
    ライブをしている間もとってもクールでね、マイク片手に激しく踊ったり、口に含んだウイスキーをブーッと噴き出したり。
    あぁ、あのアルコールのかけらが照明でキラッと光って綺麗だったな。
    もちろんわたしにもかかったけどそんなに嫌じゃなかったわ。
    まだその水滴の跡が袖に残ってる。思い出が染みになってるなんて素敵ね。
    彼の真似をする人を何人も見てきたけど、見せかけだけで誰も彼のようにはなれなかった。

    でもね、わたしは知ってるの。
    彼のほんとの姿。わたしにだけは見せてくれたの。
    彼ったら極度のアガリ症でね、本番前はいつもナイーブなの。
    周りからはギラギラしてるように見えたと思うけど、あれはただ緊張してただけなのよ。
    実はお酒なんてまったく飲めないしね。かっこつけてただけなの。
    サングラスだって人と目を合わせないため。
    アガリ症で人見知りでもあったわ。
    ライブ中なんてほとんど目を瞑って歌ってたのよ。
    笑っちゃうよね。

    そんな虚勢が愛おしくってね。
    わたしの上でロックスターみたくかっこつけて腰を振る彼がとってもかわいかった。
    時代が合わなかったのかしら。バンドは全然火がつかなくって。
    解散しちゃって、彼ももうわたしに会いに来なくなったわ。
    でもいいの、わたしはあの夜を忘れないから。


    #2 双子ユニットはツンとデレ

    彼らはアコギを弾きながら歌うの。元々はバンドだったんだけどね。
    兄がツンで弟がデレ。あれ?兄がデレで弟がツンだったかしら。
    まぁどっちでもいいわ。
    モーリスを持ってる方がツンでギブソンを持ってる方がデレよ。

    モーリスの方は冷たかったわ。
    わたしにはあまり興味がないみたいで、曲を作る方が好きだったみたい。
    わたしといてもちっとも楽しそうじゃなかった。
    いつも居心地悪そうにして、なんだかノルマをこなされてるような気分だった。
    でもたまに。たまーにね、笑いかけてくれるわけ。
    新曲を初めてわたしに聴かせるとき、そのときは少し照れ臭そうに笑うの。
    あんなのずるいよね。
    興奮してわたし濡れちゃって。それは彼の汗の雫だったのかもだけど。

    ギブソンの方はいつも擦り寄ってくるの。
    わたしといるのが楽しくって仕方ないって感じ。
    じっとしていられない性分で、モーリスが楽屋でギターを弾いている間、ギブソンはわたしにちょこちょこ迫りに来たわ。
    わたしは、まだあなたの番じゃないから、なんて言ってあしらうんだけど、彼ったら言うこと聞いてくれないの。
    彼は本番が好きですぐ立っちゃうから困ったものよ。
    もっと立たせてよー、って言われたときはゾクゾクしちゃった。
    興奮してわたし濡れちゃって。それは彼の汗の雫だったのかもだけど。

    わたしの元を去るほど売れてはないけど、そのうち卒業しちゃうかも。
    二人の初めての本番、童貞卒業させてあげたのわたしだってこと、ずっと忘れないでほしいわ。


    #3 ナードボーイのホームラン

    初めての出会いはあの子たちが19歳の頃だったかしら。
    高校時代に軽音楽部で見つけた夢を抱えながら、わたしの元へやってきたわ。
    なんにも知らない無垢な子たちだったの。
    だから手取り足取り教えてあげた。いちからね。

    そしたらあの子たち、みんなしてわたしのことを好きになっちゃってね。
    取り合いになってケンカにならないかヒヤヒヤしたのが懐かしい。
    ライブが終わった後もずっとわたしのそばで楽しそうにお喋りしててね。
    そのまま朝を迎えることもよくあった。
    最初はあの子たちだけだったんだけど、どんどん友達が増えていって、賑やかな日々だったわ。

    ライブがない日もあの子たちとはよく会ったの。
    バイト休みなんで遊びにきましたとか言って、週に何回もくるの。
    店長さんが優しい人でね。お金を持ってないあの子たちによくタダ酒を飲ませてあげてたわ。
    わたしに会いにくる暇があったら働きなさいよって話よ。
    叱ってやりたかったけどね。
    わたし嬉しかったの、あの子たちがわたしを居場所にしてくれるのが。
    あの子たちは一生懸命だった。
    だからわたしから離れてゆくのは当然のことだった。
    そうでなきゃだめなんだけどね。
    いつまでもいてほしいけど、いつまでもいてほしくない。
    あの子たちの片想いがいつの間にか両思いになってた。
    わたしがわたしの気持ちに気づく頃には、あの子たちの手焼きのCD-Rは立派な姿になって店に並んでたわ。

    もうわたしとは遊んでくれないのか。
    なーんて柄にもなくしばらくは感傷に浸ってた。
    それから何年か経った。
    最初は寂しかったけど、あの子たちの背を追うようにまた新しい子たちが現れて、わたしはまたその子たちとの新しい夜を楽しんだわ。
    トイレのドアに貼られたままのステージパスを眺めながら、ときどきあの子たちのことを思い出した。
    恋人だったのに、お母さんみたいになっちゃった。

    ある春のこと。
    あの子たちが帰ってきた。
    わたしになんの用があってやってきたのかがわからなかった。
    「また帰ってくるよ」
    「またいつでも帰ってきなよ」
    なんてどこにでもあるお決まりの挨拶じゃない。
    別にほんとに帰ってこなくたってわたしは全然いいのに、わたしは。
    「会わせたい人ができたんだ」
    わたしは嬉しかった。
    あの子たちはたくさんの人を連れてきた。
    わたしとお別れしてから出会った大切な人たち。
    あの子たちを育ててくれた人たち、一緒に育ってきた人たちを引き連れて、わたしに会いにきてくれた。
    嬉しかった。あの子たちの前では泣いたことなんてなかったのに、泣いちゃった。
    いっぱい鳴いちゃった。ほんとに嬉しかったんだもん。

    わたしの上に立つあの子たち。
    大人になったくせに、子供みたいにはしゃいじゃって、まるであの頃みたい。
    あの頃みたい、だけど違う。
    下を向いてわたしのことばっかり見てたあの子たちが、いまは前を見てる。
    誰もいなかった客席にいる大切な人の目を見てる。
    少し寂しいけど、それでいいんだ。
    それがいいんだ。

    わたしがしっかり支えるから、そのまま前を見続けて。

    あの子たちはライブが終わっても、幸せな夜を陽が昇るまで続けた。
    仲間たちと朝を迎えて、また帰ってくるよ、と手を振った。
    わたしはあの頃とは違う気持ちで、またいつでも帰ってきなよ、と手を振った。

    舞台上のドラムとアンプ。まだ熱を持ってる。

    わたしはゆか。

    わたしは床。

    ライブハウスの、ステージの、床。
    音楽が好きなの。

夜が明ける

  • ほら、夜が明けるよ。
    目を開けて、耳を澄ませて。
    見えるだろう? 僕らの姿が。
    聴こえるだろう? 僕らの音が。

    幾千の夜を越えてここまで来たんだ。
    幾千の中から聞こえた君の声を辿ってここへ来たんだ。

    僕らは生まれたところも名前も顔も違う。
    生きている理由も死ねない理由も違う。
    それでも、いま同じ時代を生きて、同じものに惹かれて、奇跡的な確率で出会えた。

    ここは待ち合わせ場所。
    奇跡を分かち合う場所。
    それぞれの人生を讃え合う場所。

    アルバムの14曲が完成した春の最中。
    最後のピースとして生まれたのがこの歌だ。

    これは君の歌、他の誰でもない、いま読んでいる君の歌。

    君はひとりじゃない。
    そんなぬるい言葉は使わない。

    君をひとりにはしない。
    研ぎ澄ませた言葉で伝える。

    ほら、夜が明けるよ。
    おいで、夜明けをともにしよう。

  • 夕陽が違って見える。
    また太陽に見放されたみたいだ。

    原風景は帰り道。
    チャイムが鳴って、みんな散り散りになって。
    待つ人の元へ帰ってゆく影をじっと眺めていた。
    僕は帰りたくなくて、沈みかけのオレンジを追いかけた。
    冷たい夜が悪さをしにやってくるから、逃げたかった。
    それでも、どこまで追っても、夕日は振り向いてくれなかった。
    その行き先がどこかは知らなかったけど一緒に連れて行ってほしかった。
    連れ出してほしかった。

    現風景は欠けた日々。
    このヒビの意味を求めてる。
    テレビの中、窓の外。
    笑い声ひとつで砕けてしまいそうな心。
    冷たい太陽が僕を睨む。
    その視線はやがて鈍い橙に変わって、終わりを告げる。
    それでも今日が終わらない。終えられない。
    朝日は悲しみを連れてきて、夕日は苦しみを残していく。
    この世界は幸せな人のために回る。

    太陽も照らせない心がある。
    誰かにとっては鈍く重い橙なのだ。

    この歌はあの毎日の記録だ。
    あの毎日の地続きに今日があることを忘れないためにある。

    生きる理由を握りしめ、抗い続ける。

イコール

  • 引き算みたいに失ってゆく。
    生きれば生きるほど別れが訪れる。
    マイナスいくらになっただろう。
    割り算みたいに割り切れない。
    受け止めきれないものがある。
    あまりばっかり心に残って仕方ない。

    掛け算みたいに膨らんでゆく。
    かけがえない悲しみ。
    崖に立っているような気持ち。

    足し算だけならいいのに。
    幸せだけ増えていけばいいのに。
    出会いだけがあればいいのに。

    計算式とは違って答えのない日々。
    いつか正解を見つけられるだろうか。
    イコールの先を見つけられるだろうか。

alone

  • 彼女は僕の心友だった。
    思いやりがあって、優しくて、自分の幸せより他人の幸せを願った。

    本当のことを上手く言葉にできないところ。
    気を遣わせないように器用に振る舞ってしまうところ。
    弱音の吐き方を知らないところ。
    僕と彼女は似ていた。お互いに自分を重ねていた。

    彼女は音楽を心から愛していた。
    音楽が生まれることを心から喜んでいた。
    そしてその音楽が人のためにあることを大事にしていた。
    自分の音楽と出会った人を何よりもいちばん大切に思っていた。

    彼女は飄々としていたけど、真面目で努力家だった。
    才能を讃えられたけど、その根にあるのは愛の才能だった。
    人を、音楽を、愛する才能。
    だから人にも音楽にも愛された。

    彼女のようになれなくとも、僕は彼女の意思を継ぐ一人でありたい。
    僕は僕のやり方で、人を、音楽をもっと愛したい。

    いつか僕のいのちが終わるとき、君に会えるとき。
    もっともっと作って、持ちきれないぐらいたくさんの歌を持ってゆくよ。

    いまも君がそばにいる。
    いつまでも僕はそばにいる。

    どうかこの歌が届きますように。

天国地獄

  • あぁもう面倒くせぇ。
    毎日毎日、来る日も来る日も仕分けてる。
    こいつは天国、あいつは地獄。
    全員まとめて天国にでも地獄にでも送ってやりゃあいいのに。
    神も仏も何やってんだか。
    今ごろ女たらし込んで酒でも飲んでるに違ぇねぇ。
    こちとら飯食う暇もありゃしねぇのに。
    閻魔も閻魔だ。
    デカい椅子にふんぞり返ってるだけじゃねぇか。
    あんななら俺にだってできらぁ。

    仕事なんか適当にやりゃあいいんだ。
    上があんなだから俺たち末端の仕分け係もこうなるんだよ。
    隣のやつなんかコインの表裏で天国か地獄か決めるんだから、俺はまだマシな方だよな。


    「すいませーん、こっち行けって言われたんですけどぉ」

    若い男だ。チャラついてやがる。
    態度が気に食わねぇ。地獄だ地獄。

    「はーい、スタンプ押すので用紙出してください」

    ほうほう、クスリの運び屋か。
    イカれちまった奴に刺されちまったんだな。
    まだ若ぇのにこんなくだらねぇことでここ来なくてもよかったのによ。
    ん?10歳の頃に捨て犬を助けた経歴あり、か。
    根はイイ奴ってことか?
    つるむ連中を間違えたってとこか。

    「今からいくつか質問をしますので答えてください」
    「あ?」

    「お財布が道に落ちています。あなたはどうしますか?」

    「そりゃ交番に届けるだろ」
    「はい。次の質問です。学生が不良に囲まれています。あなたはどうしますか?」

    「そりゃそいつ助けてやるだろ」

    「はい。では最後の質問です。大きな荷物を持ったお婆さんが横断歩道を渡れずに困っています。あなたはどうしますか?」

    「あ?」

    「大きな荷物を持ったお婆さんが横断歩道を渡れずに困っています。あなたはどうしますか?質問に答えてください」

    「そりゃ荷物運んでやるだろうが」

    「お前いま荷物運ぶって言ったか!?運び屋根性が全然抜けてねぇじゃねぇか!まんまと本性出しやがったな!地獄行けこの野郎!!」

    地獄スタンプを押してやったぜ。
    うっかり天国行きにするとこだった。
    神も仏も怒らせちゃあ俺も地獄行きだからな。


    「おい兄ちゃん、紙はここでよかったかい?」

    えらく風格のあるオッサンだな。
    さてさてこいつは?
    ほうほう、凄腕のヒットマンってか。
    どうりで劇画タッチなわけだ。

    まぁ地獄だろうが一応見てみるか。
    どれどれ。
    んー?ギャングの抗争に巻き込まれた少女を身を挺して救った?
    こいつが。こりゃ意外だな。天国案件かもな。

    「今からいくつか質問をしますので答えてください」

    「おう」

    「子供がボールを追って交通量の多い道路に飛び出してしまいました。あなたはどうしますか?」
    「車より速くガキにタックルしてやるよ」

    「はい。次の質問です。ひったくり犯がこちらに向かって走ってきます。あなたはどうしますか?」

    「そんなもんひと捻りだ」

    「はい。では最後の質問です。9回裏ツーアウト満塁逆転のチャンス、あなたはラストバッターです。ピッチャーがプレッシャーに負けて甘い球を投げてきました。どうしますか?」

    「そりゃあ思いっきり打つに決まってるだろう」

    「おいお前いま撃つって言ったか!?ヒットマン丸出しじゃねぇか!次のターゲットは神か!?仏か!?地獄行きだこのゴルゴ野郎!!」

    危ねぇ危ねぇ。
    天国にヒットマンを送り込むところだったぜ。

    「ちょっと。ねぇ、ねぇってば」

    お、こいつはイカしたネーチャンじゃねぇか。
    どれどれ、ほうほう。
    銀行強盗に暴行、結婚詐欺に貨幣偽造、他国へのスパイ行為に情報漏洩、幾度に渡る脱獄、食い逃げ、路上駐車、、おいおい、ページいっぱいの犯罪歴じゃねぇか。
    挙句の果てには盗んだポルシェで警察署に突っ込んでお陀仏ってか。
    こりゃ救いがねぇが一応やるか。

    「今からいくつか質問をしますので答えてください」

    「いーよ」

    「彼氏はいますか?」

    「いないよー」

    「今好きな人はいますか?」

    「いないよー」

    「天国にスタバがあるのですが一緒に行きませんか?」

    「えー、行く行くー」


    しまった。また天国にギャルを送ってしまった。
    このままじゃ俺のせいで神と仏がガールズバー開いちまうぜ。
    ん?そりゃまさに天国じゃねぇか。

HOPE

  • 瞬きとともに降る雨粒がくぼみに溜まってゆく。
    心に出口はない。穴の開け方を知らない。
    現実に触れるたびに水かさが増してゆく。
    息をしているのに溺れている。
    雨は止まない。何も見えない。
    瞬きとともに降る雨粒がくぼみに溜まってゆく。
    心に体温がない。あたため方を知らない。
    現実に触れるたびに凝固してゆく。
    息をしているのに凍っている。
    雨は止まない。何も見えない。

    そんな日々だった。
    いのちが擦り減ってゆく感覚だった。
    希望なんてなかったし、求めてもいなかった。
    今日と明日の境目もなくなって、流れる時の中で立ち止まっていた。
    誰にもわからないと思った。
    誰にも伝わらないと思った。
    でもそうじゃなかった。

    手を差し伸べてくれた人たちがいた。
    僕よりももっともっとつらいはずなのに、もっともっと悲しいはずなのに。
    その人たちは僕を助けようとしてくれた。

    助けてくれるはずの人に助けてもらえなかった。
    そんな幼い頃の経験が僕をつくった。
    苦しみは分かち合えるものではない、分かち合うものではないのだと思って生きてきた。
    でもそうじゃなかった。
    そうじゃないと教えてくれた。
    その人たちと過ごす時間が僕のいのちを繋いでくれた。
    その時間は僕が生き直すはじまりとなった。

    苦しみは分かち合えるということ。
    悲しみを分かち合える人がいるということ。
    それを知ったことでまた音楽が生まれた。

    それが「HOPE」だ。

    僕の中に宿ったこの火を絶やさない。
    いのちを燃やし続ける。最期の時が訪れるまで燃やし続ける。
    あなたは短い希望を愛した。
    それなら僕は、僕たちは永い希望を愛する。

いないいないばあ

  • こうして掌で顔を覆うとあなたに会いにゆける。

    あなたはあなたのまま。
    目を合わせるのが苦手なのも、笑うときに口元が歪むのも、
    煙草の匂いと混じった優しい匂いも、そのまま。
    いないいないの世界にいる。

    ずっとここにいられたら、と何度も思った。
    あなたを追いかけたいけど、きっとあなたはそれを望まない。
    だから、あなたのためにもわたしは帰る。

    悲しみを癒すことと引き換えに記憶が薄れてしまうのなら、悲しみを抱えたままでいい。
    時の流れを止められないとしても、あなたを過去に置き去りにはしない。

    迷うことがあったらあなたに問いかけるよ。
    つらいことがあったらあなたに泣きつくよ。
    嬉しいことがあったらあなたに知らせるよ。

    いないいないばあはわたしとあなたを結ぶもの。

ひかり

  • 優しくなりたい。
    優しくありたい。
    優しさは誰もが生まれ持っているものじゃない。
    生まれてから受ける愛の中で育まれる。
    優しさはそうして教えてもらうものだ。
    優しくされるたびにどこか寂しさを感じる。
    優しくするたびにどこか虚しさを感じる。
    自分の卑しさに嫌気が差す。
    自分が持たざる者だと思い知らされる。

    人の醜さと冷たさを散々見て育った。
    子供の頃にいた世界は優しさとは無縁だった。
    邪魔者扱いされる毎日に優しさなんてひとかけらもなかった。
    ひとり、暗い部屋で夕食を食べながら、隣の部屋で笑う親とその家族の声を何年も聞いていた。
    そこにあるたった一枚のふすまが、僕を孤独にした。
    息を潜めながら眠る夜、痛みとともに起きる朝。
    あの頃の自分を助けてあげられたら。いまでも何度も思う。
    知らないから、知りたい。
    優しさについてはずっとそう思ってきたんだろう。

    音楽と出会ってから、たくさんの優しさに触れた。
    それは音楽そのものもそうだし、音楽に関わる人もそうだ。

    軽音楽部の顧問の先生は父のような存在だ。
    ライブハウスの人たちは親戚のような存在だ。
    バンドのメンバーは家族のような存在だ。
    そしてあなたは親友のような存在だ。
    優しくなりたい。
    優しくありたい。
    持たざる者だからこそ、自分の手で持ってみたい。
    与えられるだけじゃなく、もらった分だけ誰かにあげたい。
    優しくない世界にいる誰かに、優しさがあることを知らせたい。

    優しさは誰もが生まれ持っているものじゃない。
    でも優しさに触れる権利は誰もが生まれながらに持っているものだ。

スターマーカー

  • 同級生が買った一冊の週刊少年ジャンプを数人で囲んで覗き見ながら大興奮した小学生時代。
    月曜に発売するジャンプがクラスを駆け巡って僕のところへ回って来る頃には金曜日だった中学生時代。
    アルバイトを始めてようやく自分で買えるようになった高校生時代。

    大人になってからは青年漫画や恋愛もの、SFやファンタジー、シリアスなサスペンスやシュールなギャグ漫画と、たくさんの漫画と出会い世界が広がった。

    僕は1990年生まれ。
    言わずもがなNARUTO、ワンピースど真ん中世代。
    キン肉マン、ジョジョ、ドラゴンボール、幽遊白書、スラムダンクetc…
    黄金期と呼ばれるものが時代ごとにあって、僕たちの世代もある黄金期の始まりとともに青春時代を迎えた。
    物語の主人公たちがライバルや宿敵との対峙を経て成長する姿は、僕の歩む道の一歩前に明かりを灯してくれているようだった。
    ただただ真っ直ぐ突き進むハツラツとした快進撃だけではなく、時に悩み、時に葛藤し、暗雲立ち込める繊細な心情も描いていくという少年漫画のスタイルは僕たちの時代から始まったものなんじゃないかと思う。
    それは現実世界の時代のムード、子供たちを取り巻く環境や社会の変化、そして当事者である子供たち(僕たち)の心を反映させたものだった。
    それらを殺伐としたものにせず、夢とロマンを抱かせて昇華してくれるのだから、漫画はやっぱりすごいものだ。
    ミュージシャンと名乗れるようになってからは、そういった漫画の素晴らしさ、そしてそこに見える絶え間ない努力と想像力の探求にたくさんの刺激を与えてもらった。

    漫画に魅せられた読者として、ひとつ心配事があった。
    僕が体験した黄金期のその圧倒的な眩しさ故に、これらを超える少年漫画とはもう出会えないんじゃないかと感じ始めていたのだ。
    何とも失礼な杞憂ではあるが、僕の人生にとってそれだけ大きなものだった。

    そこに登場したのが、「スターマーカー」が生まれるきっかけとなった「僕のヒーローアカデミア」だ。
    特殊能力者のバトル漫画という少年漫画の定石は正直に言ってもう出尽くしたぐらいの感覚だったのだけど、それを人々の『個性』と捉えることで日常に寄り添わせるアイデアには、「こんな方法があったんだ!」と感服した。
    オールマイトのキャラクター像も(知らない人は是非読んでね!)、技を繰り出した時の擬音がアメコミ風に描かれていることも新鮮だった。
    これは海外のアメコミファンにとっても嬉しいものだったのではないだろうか。
    僕個人の頭の中のことだけど、漫画が日本独自の発展を続け、世界にも届く文化になったことで、気付かないうちに日本発のオリジナリティーというものに囚われていたんじゃないかと考えさせられるくらい斬新だった。(偉そうにすみません!)
    学園ものであることも、親近感を感じられるひとつの要因だ。
    ヒーローとして成長する姿を軸に置きつつ、体育祭や文化祭といった青春の1ページも楽しく描く。
    僕たちがアニメ主題歌を担当することになったのは文化祭編だった。
    壊理(エリ)ちゃんという少女をめぐる物語のひとつの完結編だ。
    読んでいて思わず泣いてしまった大好きなシーンがあったので、主題歌を担当できるのがとても嬉しかった。

    当たり前にある幸せを知らない壊理ちゃんが、主人公のデクと仲間達との出会いによって、嬉しい、楽しい、という誰もが知っている感情を初めて経験していく様子を描いている。
    そのラストシーンは圧巻だった。
    壊理ちゃんが心から笑う笑顔のコマ。
    作者の堀越先生がどういう気持ちで、どれだけの気合いを持って描いているのかが絵から伝わってくる。
    単なる絵じゃない、心を揺さぶる、絵を越えてくる何かがそこにある。
    それはそう簡単に意図して作り出せるものではなく、送り手の積み重ねられた想いと受け手の人生が奇跡のように交差して生まれ出るものだと分かるのは、僕も音楽活動の中で何度かそれを経験したことがあるからだ。
    120%が出る瞬間を知っているから、あの凄みにさらに感動する。

    その感動に応えたい、そんな気持ちから生まれたのが「スターマーカー」だ。
    いちファンとして、そしてミュージシャンとして、ヒロアカに参加できてよかった。

    バンドとしても、ライブに欠かせない新たな看板となってくれた。
    リプレイツアーではアンコールの最後の曲でフィナーレを飾ってくれた。
    ミラーボールが輝いて、虹色の照明がステージとフロアを包む。
    まるであの文化祭の舞台のようで、ヒロアカのみんなもここにいるような気がして嬉しかったな。

    つい最近の話。ヒロアカ第33巻。最終章の幕開け。
    少年漫画のすべての歴史を背負ったようなシーンがあって心が震えた。
    僕の黄金時代を越える作品にはもう出会えないのかもしれないという杞憂は晴れた。

メリーゴーランド

  • ねぇハニー、今日も世界がキラキラしてるよ。
    通りすがりの雑談も、小窓の中の馴れ合いも、僕にはいちいち眩しく映るよ。
    この人波の眩しさに潮時が来ればいいのに。
    この居心地の悪さを見殺しにできればいいのに。
    そんな気持ちを僕なりに綴るよ。
    白文字ばかりの手紙でも君なら読めると思うから。

    ねぇダーリン、今日も世界がキラキラしてるよ。
    申し合わせの幸せも、雨戸の外のじゃれ合いも、わたしにはいちいち眩しく映るよ。
    この荒波の忙しなさに汐凪が来ればいいのに。
    この色合いの悪さも着こなせたらいいのに。
    そんな気持ちをわたしなりに包むよ。
    見通し立たない心でも君なら分かると思うから。

    記憶を漁り、時の流れに足掻く。
    思い出を辿り、時の流れに抗う。
    飾りたがらない僕と語りたがらない君がいる。
    値なんて測れないのが愛、代わりなんてないから哀。

    人生はメリーゴーランドのようだ。
    あなたの先にいる人、後ろにいる人。
    重なるすべがなくなっても、すれ違いすらなくなっても、その距離は変わらない。
    降りなければ、その特別な想いが失われることはない。

    そして信じたい。
    そのメリーゴーランドを降りなければ、いつか誰かが隣の馬に乗って並んでくれるかもしれないということを。
    その誰かがあなたの悲しみも喜びもすべて受け止めてくれるかもしれないということを。

    生きることはつらい。
    死ぬことすら眩しく見える。
    それでも。それでも。
    何十何百何千何億何十億何百億何千億、その中から選んだいちばん大切な言葉が、絶望の彼方に立つあなたと僕らを繋ぐことを願っている。

あとがき

  • ドキュメントで終わらせない。
    僕はソングライターだから。
    音楽を奏で、言葉を紡ぐ。
    悲しみも喜びも音に乗せる。
    問いかける人、呼びかける人、時には導く人となる。

    「Honey & Darling」を作って、あらためて実感した。覚悟を決めた。

    ギターを手にした15歳、最初から腹は括ってたつもりだったけど、生と死の間で下した決断はこれまでとは違う。

    ドキュメントをドキュメントで終わらせない。
    僕はソングライターであり、KANA-BOONのフロントマンだから。

朝日(ネクライトーキー)

  • 朝日(ネクライトーキー)
  • いろいろありましたが、それを経てなおKANA-BOONがこれほどまでに優しい歌を作り続けていることが何より素晴らしいことなんだと僕は思います。

    朝日(ネクライトーキー)

石原慎也(Saucy Dog)

  • 石原慎也(Saucy Dog)
  • 全曲とてもワクワクしながら聴かせていただきました!明るい曲にもポップの中に切なさや寂しさが垣間見えたような気がして歌詞だけじゃなく曲全体が唸っているように感じました。特に好きな曲はマイステージ、橙、aloneでした!!
    鮪さんずっと大好きです!

    石原慎也(Saucy Dog)

金澤ダイスケ(フジファブリック)

  • 金澤ダイスケ(フジファブリック)
  • ニューアルバム発売おめでとう!新しい春がやってきたようなフレッシュな曲たちに、なんだかとっても嬉しくて、自然と自分の心も踊っていました。個人的にはKANA-BOONのみんなの喋りも大好きなんで、テレビにラジオに雑誌に大活躍してくれる事を楽しみにしています!

    金澤ダイスケ(フジファブリック)

岸井ゆきの

  • 悲しみや孤独とか愛とか、単純に楽しいとか嬉しいとか、そういう経験や記憶を大事にしたくて、でも大事にしすぎて誰も入れない囲いを作ってしまうときがある。そうしないと守れない気がしてたけど、こころに残った思いは、失くならないしだれも奪わないし、ぎゅっと抱いたまんまどこまでも連れて行けるんだ、と思えたし、それをぜんぶ肯定してくれるようなすてきなアルバムでした。有難う!

    P.S.皆が元気そうで嬉しいです。また山岸聖太監督と共にご一緒できることをいのっています。

    岸井ゆきの

小池貞利(the dadadadys)

  • 小池貞利(the dadadadys)
  • 気持ち良く脳を揺らせてくれて、とてもありがとうなアルバムでした。 いつの日かカナブンの羽音がこのアルバムのアンサンブルのようになったら、ダーリンもハニーも誰しもが夏を待ち望むことでしょう。
    でもさすがにうるさいのでそんな日は来ない方が良いと思う!(怒)

    P.S 鮪、グレッチありがとうございますm(_ _)m

    小池貞利(the dadadadys)

小出祐介(Base Ball Bear)

  • 小出祐介(Base Ball Bear)
  • 人生と生命への問いかけに満ちた大作だった。 悲しみを、名前のない漠然とした感情を、大きなエネルギーへと変換してくれる音楽は、芸術は、なんて素晴らしいのだろう。
    きっと大きな山を乗り越えたのだろうKANA-BOONが、逞しく音楽と戯れていく様を、これからも見守りたい。

    小出祐介(Base Ball Bear)

じん

  • じん
  • 一つの時代を作ったバンドって、なんかどんどん拗れていっちゃったり、過去に呪われ続けたりしちゃう印象あるですけど、今作一曲目の「Re:Pray」を聴いて「あぁ、KANA-BOONはここにきて真っ直ぐになるんだ」と、素直に感動しました。
    時代の移り変わりの中で、時代と共に悩み、探し、純粋に音楽を信じ続けている彼らが好きです。 あぁ、メリーゴーランドもよかった。良い音楽をありがとう。また今度飲みながら話そうぜ。

    じん

ヤマサキ セイヤ(キュウソネコカミ)

  • ヤマサキ セイヤ(キュウソネコカミ)
  • アルバム発売おめでとうございます!!
    ここ数年の事や、立ち止まって再スタートしたり、色々経て産まれたであろう楽曲たち。
    鮪から出た言葉が、音楽に乗って、KANA-BOON自身にも、その音楽が届く人、届いていた人にも向いている。
    人間味や生き様が感じれて好きだ。
    フロアを沸かしてナンボだけでない懐の深さ、成熟し始めた1バンドの姿か。頼もしくてかっこいい。
    長い付き合いになってきましたが、お互いなるたけ健康で生き残ってこうぜ!!
    また!!!(ё)

    ヤマサキ セイヤ(キュウソネコカミ)