KANA-BOON 谷口鮪 × シナリオアート ハヤシコウスケ
ロングインタビュー | ページ 2

一方、KANA-BOONのもうひとつのカップリング曲“ぬけがら”(初回盤A収録)は、アッパーでエモーショナルな曲でありつつ、かなりヘヴィな自問自答の歌詞ですけども。

谷口 それこそスプリット盤をやるってなった時に、こういう真っ直ぐな歌というか、泥臭いというか、もがいてる感じの曲が、シナリオの曲と一緒にCDに入っていれば、聴いた人にとって「KANA-BOONとはどういうものか」っていうのが、シナリオとの対比で伝わりやすいんじゃないか?っていうことで作り始めて。僕らもほんと、夢を持ってやっていくことが活動の根源ですけど、夢を持っていても、普通の人はやっぱり生活があったり、自分の人生の中で夢とは違う道を行くこともすごく多いし。っていうか世の中ではそういう人がほとんどのはずやから。それでも、心のどこかにシコリがあって……そういう人にグッと深く聴いてもらえればいいなと思って。「戻ってもいいんじゃないか?」っていう。夢への分岐点を、もう一回作ってみてもいいんじゃないかなと思って。そういう曲になればと思って作りましたね。

なるほどね。夢の追求の仕方は違うけど、それぞれの「自分の夢」に向かって切磋琢磨しているKANA-BOONとシナリオアートが、オーディションという場所で一緒に並んで。違う道を進みつつも、今回スプリット盤として楽曲が一緒に収録されて、それぞれの夢へのスタンスと現在地がCDっていう形になっているのは面白いですね。

谷口 でも、ここからはたぶん、お互い変わると思うんですよね。僕らは僕らで、シナリオがこのタイミングできっかけをつかんだりとか、自分たちの中にはなかった気持ちとかが、僕らによって少しでも芽生えてくれたら嬉しいし。1年先にデビューしてるし、走ってくスピードも断然速くやってきたし。僕らが知ってることとかも、シナリオよりも多いはずやから、そういうのを伝えてあげれたらいいなと思うし。KANA-BOONっていうバンドのことを一旦忘れられるとしたら、このスプリットを聴いて「シナリオのほうが断然ええやん!」みたいな(笑)、そういう結果になればいいなあ、ぐらいの気持ちですね。全然そんなわけにはいかないんですけど、僕らも評価してもらわないとマズいですけど(笑)。でも気持ち的には、仲間としてきちっと評価されてほしいなって――この間も飲みに行ってる時に、商店街でいろいろ話したんですけど。

コウスケ 夜中にね、飲みながら(笑)。KANA-BOONっていうバンドは……あんまり出さないですけど、めちゃめちゃ優しい人たちなんやなあって思いますね。仲間想いというか。バンドで大変な思いをしながらも、夢に向かってやってる仲間というか。そういう気持ちをちゃんとわかっていて、それをフックアップするぐらいの心の広さがめちゃくちゃあるなあと思って。何かを与えるというか。

谷口 まあ、ライブハウス上がりだから。ほんとに……埋もれていくバンドだらけで、自分らも埋もれていってたかもしれないわけで。でもやっぱり、こういうところに来れたし、シナリオも同じところにいるわけで。そういうことがすごく嬉しいし、大事にしたいというか。シナリオはやってる音楽の質も高いし、作り込まれてるし、ちゃんと人に響く音楽をやってるから。もっと人に聴いてもらえるきっかけがたくさん増えればいいなと思って。

ちなみに、これはおふたりそれぞれに伺いたいんですけど――お互いのバンドを見た時に、「相手のバンドにあって、自分たちのバンドに欠けているもの」あるいは「この点は相手のバンドのほうがずば抜けてるなあ」と思うポイントを挙げるとすれば?

谷口 それはもう……サウンド作りの知能ですね。バンド以外の音をたくさん使ってるバンドは山ほどいますけど、それを使いこなせてるバンドは少なくて。そういう音を使いこなしつつ、もっとポップなところに行くバンドもいるけど、それをロック畑で使いこなせてるコントロールの能力もすごいし。あと、そういう音が頭の中に鳴ったとして、それを実現させるスキルというか――「今、頭の中で鳴ってる音はこの楽器の音で、こういう鳴らし方がいい」とか、そういう知識も羨ましいなあと思って。自分も曲は作ってて、何かが頭の中で鳴るんですけど、その音に相応しい楽器は何やろう?っていうのがわからないんですよ。そこを的確に突いていくのはすごいスキルやと思います。

ハヤシさんからKANA-BOONを見てどうですか?

コウスケ ライブとか、自分らよりすげえなって思う魅力はいっぱいあるんですけど。作曲者として、鮪くんのメロディがもう……魔法のようやなあと思って。やっぱり音楽を聴く時、一番にメロディを聴くんですけど、「これは勝たれへんな」って思いますね。自分も結構メロディにはこだわりがあるんですけど、「どうやってそんなにいいとこ突いてくんのやろ?」って。ノウハウが全部頭の中に入ってるんだと思うんですけど、フィルターというか。それがもう、圧倒的なセンスやなと思いますね。あと、歌のメロディもそうなんですけど、古賀(隼斗)くんのギター・リフも一発で覚えちゃうし。

KANA-BOONはギターもどんどん冴えてきてますからね。

谷口 うん、あいつは……何も考えてないです(笑)。うちはほんとに何も考えてないんで。メロディの作り方にしても、スタジオのセッションでやっていくから。直感的に、勝手に口から出たメロディを採用したりしていくんで。最低限の自分の中のルールはありますけどね。昔から、いろんな音楽を聴いて、「ああ、これはいいな」っていうよりも、「ああ、これは嫌やな」「これは普通やな」って反面教師的に判断することが多くて――まあ、良く言えばセンスとかそういうことなんでしょうけど、ほんとに考えずにやってたりするんで……。そこはもう、お互い自分にないものに憧れてる感じですね。僕らはシナリオの知的なところに憧れるし、シナリオは僕らの力の抜け方に憧れてるやろうし(笑)。

コウスケ それはありますね(笑)。打算的にというよりは、奇跡的に生まれるドラマチックさには憧れますね。僕らもわりと、スタジオのセッションから作っていくんですけど。その時にフェイクで歌ってるメロディを採用することもありますけど、だいたいは持ち帰って、ひとつひとつのフレーズの中で、何回か歌いながら、細かく詰めていきますね。