初回生産限定盤A Disc 2
「KANA-BOONが人間をつくります。」
スペシャル・インタビュー

——初回生産限定盤Aに『KANA-BOONが人間をつくります。』を付けるのはスタッフサイドからの提案だったんですか?

谷口鮪 そうですね。ここに入ってる曲はこれまでリリースしてきた作品に収録したものも多いですけど、そのなかでもこうやって全10曲がそろったうえで聴いてもらいたい曲があって。最後の「Construct Connect」なんかは特にそうなんですけど。

——鮪くんの弾き語りによる「ピアスを開けた」もきっとそうですよね。

谷口 まさにそうです。

古賀隼斗 特に「Construct Connectとか「ピアスを開けた」は、コンセプトがあるからこそ書けた曲やし。

谷口 「ピアスを開けた」はコンセプトなしで表に出すのは恥ずかしい(笑)。

飯田祐馬 インディーズ時代は「ピアスを開けた」のように鮪のパーソナルな部分が強く出ている曲は珍しくなかったけど、今聴くと逆に新鮮やな。

谷口 だからこそ照れる(笑)。

——新録したことも大きな意味があるよね。

谷口 そうですね。「かけぬけて」、「MUSiC」、「目と目と目と目」はあらたにミックスして、それ以外は全部新録ですね。

——つまり『Origin』のレコーディングと同時進行だったということですよね。

古賀 そうなんですよ。『Origin』のレコーディングと完全に被ってました。

——ポジティブに捉えると、『Origin』がバンドの原点を見つめ直し、純粋に音楽を楽しむマインドを取り戻すことを意識したアルバムだからこそ、同時進行で『KANA-BOONが人間をつくります。』のレコーディングをしたのはいい相互作用があったんじゃないかと想像するんですけど。

谷口 思い返せばそういう作用があったと思いますね。『KANA-BOONが人間をつくります。』の曲を新録しようという企画が持ち上がった段階ではまだ『Origin』のテーマは見えてなかったんですけど、今思えば運命的に繋がった2枚だと思いますね。

——時空を超えた2枚組みアルバムのようにも聴けるなと。

谷口 うん、そうですね。

——KANA-BOONはこういう運命的な繋がりをよく引き寄せますよね。

谷口 今回は特にそれを強く感じて感動してますね。

飯田 ただただ運がいいバンドなので(笑)。でも、確かにちょいちょい運命的な繋がりを引き寄せますね。

——そもそも『KANA-BOONが人間をつくります。』という企画は2012年のインディーズ時代に展開したもので。自主企画の対バンイベントを5ヶ月連続で開催し、その都度、人間のパーツをテーマにした新曲を作り、それを会場限定でリリースするというアイデアはどこから生まれたんですか?

谷口 第一の目的はファンのみんなに恩返ししたいということで。この企画を考えたのは、2012年にキューンのオーディション(「キューン 20 イヤーズオーディション」)でグランプリに選ばれて、その年の4月にLIQUIDROOMでアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)のライブでオープニングアクトをやらせてもらったあとなんですよね。そのときはもうキューンとやりとりを重ねて、メジャーデビューに向けた話し合いをして、上京することもリアルに見えていたんです。だから、ひとまずそれまで応援してくれたみんなにプレゼント的に恩返ししたいなと思ったんですよね。

——なるほど。そういう思いがあったんですね。

谷口 応援してくれるみんなが何をしたら喜んでくれるか考えて、5ヶ月連続でシングルを作って会場限定で販売しようってなったんです。中身については、5枚のシングルを集めてコンプリートする楽しさがあるものということで、『KANA-BOONが人間をつくります。』のアイデアを思いついて。今もそうですけど、コンセプトアルバムを作りたいという思いはずっと持っていて。そこに近づいた最初の作品でもありますね。

——“人間”というテーマはどこから湧いてきたんだろうね?

谷口 その発端は全然思い出せないんですよ。でも、ひとつ思うのは、当時は人との関わり方や“対人”ということをすごく意識していた時期やったと思うんですよね。オーディションがあって、アジカンのライブのオープニングアクトを務めて、KANA-BOONというバンド名がワーッと広がって。それまでは主観ありきで表現することしかやっていなかったのが、人との関係性を考えるようになっていったんですよね。だからこそ、“人間”というテーマを思いついたのかなと。

——お客さんに向かっている曲と特定の人に捧げている曲が、当時のソングライティングの両軸という感じですよね。

谷口 うん、そのふたつがメインですね。もともと特定の誰かに捧げるような曲を作って、そこからたくさんの人と出会い、ファンと呼べる人たちも増えていって。それにしたがって、歌う対象がシフトしていきました。

——『KANA-BOONが人間をつくります。』企画の対バン相手とはどういう関係性だったんですか?

谷口 知り合った順序としては、オトワラシのギターが僕らと同級生で。僕らが飯田と出会ったように、彼らは違う学校の軽音部だったんです。出会ってからずっと友だちでありライバルでもある関係ですね。コンテンポラリーな生活は、僕が個人的にライブハウスで知り合って、意気投合して。今でも一番仲がいいし、バンドとして同じような空気感を持ってると思いますね。ジラフポットは彼らがコンテンポラリーな生活と仲がいいというところから知り合って、“一緒にやろうよ”ってなったんです。

——企画イベントのチケットも各100枚限定で作った5枚のシングルはすべてソールドアウトしたんですよね。

谷口 そうなんです。うれしかったですね。

飯田 そんなに売れへんやろうから100枚限定にしたんですけど。

——5枚コンプリートしたお客さんはけっこういたんですか?

谷口 10人はいると思いますね。僕たちの名前が広がる前から信じてくれた人たちがコンプリートしてくれて。そういう人たちへの恩返しという意味もあったので。

——メジャーデビューが見えてきて、当時のバンドの心境はどんな感じだったんですか?

谷口 希望に満ちてましたね。

古賀 やっとチャンスを得ることができたなという感じでした。

谷口 メジャーのレコード会社ってそんなに悪い人ばかりじゃないんやということがわかって。

古賀 それはデカかったね。

谷口 メジャーのレコード会社に関するネジ曲がった情報しか届いてなかったんやけど、実際は違うんやなって。

古賀 バンドの音楽性のことをめっちゃ言われるとかね。

——実際そういうレーベルもあるとは思いますけどね。KANA-BOONは最初からバンドの思いや意見を最優先できているという。

古賀 そうですね。最初に“どういう音楽がやりたい?”って訊いてくれたので。“あ、バンド主体でやれるんや”とわかってうれしかったです。

谷口 そこで自分たちの未来やこれから関係を持っていく人たちへの希望が見えて。ワクワクしましたね。

——この10曲はすべて書き下ろしたんですよね?

谷口 はい、書き下ろしました。今までで1、2を争う大変さでした。昔から曲を作るのは早かったので、“余裕や”って高をくくってたんですけど、気づいたらギリギリのスケジュール進行になってましたね。

飯田 あのとき何してたんやろな?

谷口 バイトとかしてたんちゃう?(笑)。

古賀 最後に「Construct Connect」を作って、鮪の歌詞が乗ったときに“この曲で終わるためにそれまでの9曲を作ってきたんやな”って思った。

——「Construct Connect」はKANA-BOONの楽曲群の中でも屈指の名曲だと思います。

谷口 自分のなかでもかなり上位に入る大好きな曲ですね。

——あらためて各曲のオリジナル音源を聴き直してどんなことを感じましたか?

古賀 自分の昔の手グセがかわいいなと思いましたね(笑)。

飯田 それは俺も思った(笑)。

古賀 オリジナル音源を聴くと、プリング・オフやハンマリング・オンもこなれてない感じがあったり、フレーズに関しては今ではなかなか出せないストレートなフレーズが多いんですよね。昔の自分から学ぶような感覚がありましたね。

——新録にあたってフレーズは一切変えなかったんですか?

古賀 そこは我慢しました。やっぱり昔のよさがあるので。それはどのパートにも言えることですね。

——こいちゃんはどうですか?

小泉貴裕 このコンセプトとタイトなスケジュール感でこんなにいい曲をいっぱい作れたのが、自分たちのことながらすごいなと思いましたね。あらためて自信にもなったし、ドラムに関してもフレーズを見直すいい機会になりました。当時は曲に素直に反応して出てきたフレーズが多いんですよね。考えこんで作るフレーズとの違いを感じることができてよかったなと思います。

——こういう話も『Origin』のテーマ性に繋がってきますよね。

小泉 そう、バンドの状況や『Origin』で目指したこととかなり合致したなと思いますね。

飯田 3年ちょっと前の曲ですけど、子どもから大人になったような感覚さえあって。当時は深く考えずに音楽を楽しんでいて、それがフレーズにも出てるんですよね。そのよさを感じながら新録しました。

——鮪くん、それは曲の内容においてもそうですよね。

谷口 うん、今はもう書けない曲ばかりですね。

——どういう部分においてそれを強く感じますか?

谷口 今みたいに曲を作ってそれをリリースすることが生活の重要な一部ではなかったので。当時はむしろ曲を作ったりライブすることがつまらん日々の救いやったんですよね。同世代のやつは安定した生活を送ってたり、成功してるやつもいて。どうしようもないと感じる自分を救ってくれるのが音楽だけやったから。その音楽との距離感は、今とはずいぶん違いますよね。当時の曲は、自分自身が投影されていて、そこに自分が宿ってるような感じが強くあるんですよね。今はいい意味でも客観性を持っていて、自分のすべてを曲に詰め込んでしまう前に“ちょっと待てよ。それでいいんか?”ってブレーキをかける自分がいるので。

——その違いは大きいよね。

谷口 大きいですね。その術を知らなかった当時の僕らは、武器も装備も何もない状態で。でも、だからこその強さもあったんやなと思いますね。

——当時の自分に憧れるような感覚もある?

谷口 ありますね。感じたことがそのまま曲になり、当時の恋愛のことがそのまま歌詞になっていたあのころの感覚を取り戻したいという思いはあります。

——この10曲はどれも熱量が高い曲ばかりで。サウンドにおいても歌詞においても、初期衝動の塊みたいな感じですよね。

古賀 気取ってないんですよね。今はなかなか素直な音は出せなくて。自分のなかでカッコいいと思う感覚って変わっていくじゃないですか。今は素直な音だけじゃ満足できない自分がいるので。たとえば「クローン」のギターソロもアドリブでバーッと弾いたものをそのまま採用してるので。その勢いはすごいなと思いますね。

——今後、そういうふうに録ってみてもいいだろうし。

古賀 そうですね。もっとレベルアップしてからそういう録り方をまたしてみたいですね。

——やっぱり強く印象的なのは「ピアスを開けた」と「Construct Connect」なんですよね。ほかの8曲と連なる必要性が特に高い2曲だから。

谷口 そうですね。「ピアスを開けた」は実際に僕がピアスの穴を開けたときの話なんですけど。今は埋まってしまってるから、切ないなって。昔の日記を読んでるようで恥ずかしいんですけど(笑)。

——アコギの音も新録とは思えないくらい生々しいよね。

谷口 クリックなしであえて拙い感じで弾いたって言いたいですね(笑)。

——ぜひツアーでやってほしいなと。

谷口 う〜ん、そこは今のところグレーな感じですね。

古賀 鮪以外はみんなやってほしいと思ってます。

谷口 それはひしひしと感じてるわ(笑)。

飯田 お客さんの反応も気になるよな。

谷口 たぶんセンチメンタルなムードになると思うのよ。それがまた照れんねん。

——『Origin』のツアーで歌う意味は大きいと思う。

谷口 そうですね。『KANA-BOONが人間をつくります。』の曲はツアーのセットリストに盛り込みたいとは思ってます。

——「Construct Connect」は、タイトなスケジュールのなかでよくこんなにいい曲を作れたなと。

谷口 自分としても企画の最終話を書ききれたという達成感が強くあって。

——これもセッションで作ったんですよね?

谷口 セッションですね。

——セッションでこういう曲も作れるんだなって。サウンドのドラマティックな展開しかり、丁寧に作りこまれたような感触がある歌メロしかり。

谷口 特殊ですよね。テンポも変わるし。

古賀 ギターもバンバン動いてるし。

小泉 サビのドラムパターンがどれも違うんですよね。個人的にもラストに向かって開けていく展開がめっちゃ好きですね。

古賀 すべてが上手くいった曲やな。

飯田 鮪のコーラスもすごい。“女声やん!”って思った。ついに替え玉を起用しやがったと(笑)。

谷口 全部俺の声や(笑)。コーラスもめっちゃ本気出したから。

——歌詞は『KANA-BOONが人間をつくります。』のテーマを総括しつつ、KANA-BOONの音楽論としても読み取れる内容だと思う。

谷口 テーマも完結できてるし、当時からKANA-BOONが打ち出してるメッセージが〈君を繋ぐよ 離しはしない〉というフレーズによく表れてると思うんですよね。その部分で今と通じてるなと思ったのが、「ランアンドラン」には〈君を過去に置き去りにはしない〉というフレーズがあるんですよね。そのメッセージ性をずっと守ってるんやと気づいて誇らしい気持ちになりました。

——『KANA-BOONが人間をつくります。』は初回Aのみなんだけど、これは多くの人に聴いてもらいたいよね。

谷口 BのDVDも観てみらいたいし、枚数を売りたいというよりも、楽しんでもらいたいという思いが強いから。初回AとBを買って、どちらかのDISC1は友だちに貸したり、好きな人にプレゼントしてほしいですね。

飯田 それ、ええな。

谷口 『KANA-BOONが人間をつくります。』を聴いてもらうと『Origin』の楽しみ方も変わるし、KANA-BOONというバンドをより深く知れるはず。たぶんもっと好きになってもらえると思います。